vol.004 栄養素を語らない、とは!


●栄養素を語らない栄養士なワケ


私は、こちらのメルマガで「栄養素を語らない栄養士」と名乗っているのですが、今回はこの理由をお話します。


私は以前に、病院で勤めてました。


大学を卒業して初めて勤務した病院では、学校で習ったことをまじめ~に患者さんにお話していました。


例えば…


「野菜は両手で持てるくらいが350gなので、一日にそれを目安に食べてくださいね」


「かぼちゃやサツマイモは、ご飯と同じくカロリーがありますよ」


「卵はコレステロールが多いので、一日1個までにしましょうね」


「鶏肉は皮の部分のカロリーが高いので、皮は外した方がいいですよ。

ヘルシーにしたければ、もも肉よりも胸肉がいいですよ」


そうすると、こんなことを言われたのです。


「栄養士さん、君は若いから分からんと思うけど、ぼくら、戦時中にサツマイモのつるとかばかり食べてたから、もう、サツマイモは食べたくないんやわ」


「病院の給食は、鶏肉が多いのが嫌やね。

私、子どもの頃、庭で鶏を飼っていて、それをよく食べていたから、もう見るのもいややねん」


「栄養士さん、洋菓子を食べたら血糖値上がるの分かるけど、パートしてると3時のおやつをみんなで食べるから、自分だけ食べないとかできないで。

それに立ち仕事やから、食べないとお腹空くし…」


…んん?


私が栄養士として伝えていることって、正論なだけで、患者さんの役に立ってないんじゃないの!?


もしかして、机上の空論!?


そして、栄養相談のはずが、


「定年退職した旦那が、毎日家にいてるから、昼ご飯の用意をするのが苦痛で…。何にもしてくれへんから、もうイライラして!!」


「仕事後に、直接家に帰らずに、赤のれんをくぐってリフレッシュして帰らないと、もうやってられへんのやわ」


など、生活背景を語られる方が、とても多いことに気が付きました。



そしてカウンセリングの勉強をして分かったのは、


・食べることって、何を食べたらいいか?という、そんな簡単なもんじゃなくて、心理的背景がとても複雑に影響している


・なぜ食べてしまうか?を考えずに、ただこの食材には〇〇という栄養素が豊富に含まれているので、積極的に摂りましょう!と言っても、患者さんの耳には届かない


ということです。


先ほどの例でいうと


【事例1】

「定年退職した旦那が、毎日家にいてるから、昼ご飯の用意をするのが苦痛で…。何にもしてくれへんから、もうイライラして!!」


・「毎日家にいてる旦那さんに、どうしてほしいと思っているの?」


ゴロゴロされるのが嫌なのか、

手伝ってくれないことが嫌なのか、

メニューに文句を言われることが嫌なのか、

自分の本当の想いに気づく。



その上で、それを旦那さんにどう伝えたらいいか?を考えて、

実際に行動に起こしてみる



旦那さんの言い分を聞くと、腹の立ち方も変わってくるかもしれない


(例えば、以前家事に手を出してやり方が違う!と文句を言われたから、何もしない方がいいと思って、あえて手出ししないのかも知れない)


一人でイライラしてるよりは、話すことで、問題解決の糸口が少しでも見つかれば、食べるという行動も変化が起こる可能性がある。



【事例2】

「仕事後に、直接家に帰らずに、赤のれんをくぐってリフレッシュして帰らないと、もうやってられへんのやわ」


・「やってられへんのは、何が原因?」


部下が仕事のミスが多くて、自分が後始末のフォローに追われていることなのか、

上司が任せてきた仕事をうまく部下に振り分けられず、自分ひとりで抱え込んでいることなのか、

仕事終わりで疲れているのに、家に帰ると妻にあれこれ言われて居場所がないことなのか、

イライラの訳に気づく。



そのイライラを解決するために、今自分がすべきことを考える


(例えば、部下の仕事のミスを減らすために、自分ができることはないか?

失敗の原因を一緒に考えるとか、自分がこまめにチェックするとか、判断に迷ったときは必ず先輩に確認するくせをつけさせる、などの具体的行動を考える)



そのすべきの行動を起こし、相手の言い分も聞き、どうすればいいかを考える


(もしかしたら、部下はいちいち先輩に聞くと、仕事ができないと思われるのが嫌で、自信ないながらも自分で判断しているのかもしれない)



イライラが減れば、訳もなく赤のれんをくぐる必要はなくなる

(飲みたい時は飲む!というように、楽しく飲めるようになる)


このように「なぜそんな風に思うのか?」「なぜそんな行動をとってしまうのか?」という自分の素直な気持ちを感じて、必要な行動をとることが、食の問題の解決につながることもあるんですよ。



●栄養バランスが整った食事は、いつも素晴らしいのかな?


こんな事例を聞いたことがあります。


【事例3】

どこかの病院の給食で「カロリーメイトの卵とじ」という一品が出たそうです。


…これ、どう思います?


病院栄養士「栄養バランスを考えているので、大丈夫です」



【事例4】

今どきの小学校給食の例です。


「ジャージャー麺、フライドポテト、サイダーポンチ、牛乳」

「ソース焼きそば、串カツ、ワッフル(ココア味)、くきわかめサラダ、牛乳」


学校栄養士「1週間の栄養バランスを考えて、その平均値が栄養の基準をクリアしてるので、今日のメニューでも大丈夫です」


これ、会社の社員食堂で出たら、クレームものだと思いませんか?


栄養バランスだけを考えると、必ずしもいい献立になるとは限らないんです。


栄養価だけを考えてしまうと、まさに木を見て森を見ず、になってしまうこともありえるということです。



●栄養素も大事だけど、それ以上に私が大事にしているもの


私は、栄養素は大事だと考えています。


例えば、急性期の患者さんや、疾患によっては、栄養素を考えた食事はとても重要です。


病院の献立は、その一例です。


でも、普段の食習慣を、理想的なものに変えていこうとする時、その人のバックグラウンドは無視できません。


なぜこの人は、こういった現状を送っているのか?という「その人全体」を見なければ分からないことが多々あります。


実は、家庭の問題が原因だったり、職場でのストレスが原因だったりするんです。


上に書いた【事例1・2】がこれに当てはまります。


なので、私は個々の栄養素を論じるより、心の問題、コミュニケーションを大事にしているんです。



●離乳食に関してはどう考えているの?


離乳食に関しても、栄養をとるということよりも、楽しむこと・新しいものへのチャレンジ・ママとのコミュニケーションを大事に考えています。


離乳食はこのように進めましょう、という手引きがあるので、それから外れると、ママ達はみな不安になります。


・うちの子、野菜は食べないんだけど…

・おっぱいばかり飲んでいて、大丈夫なのかな?

・同じ月齢の子は、もう2回食なのに、うちの子は全然食べなくて…


みんな違って大丈夫です!


・この時期に、野菜を食べなくても心配ありません。

・おっぱいばかり飲んで食べなくても、大丈夫です。

・1回食が続くのは、その子の身体が、まだ1回食に適しているからです。


栄養素という概念にとらわれず、ママが楽しんで離乳期を過ごせることの方が大切だと思っています。


ママがしんどくなると、そのママの辛いオーラが子どもに伝わって、食事は楽しくないもの、ママがニコニコしないから余計に食べたくない…と、負のスパイラルになっちゃうこともありますよ~。



私は、こんな風に、大人も子どもも赤ちゃんも、食の問題は、心と切っても切れない関係にあるんじゃないかな?と思っているんです。